why took a sword


knight ...02

why took a sword



あの一夜が明け、翌朝、奇跡の生還を果たした俺に待ち受けていたのは、

「ふ、ふ、ふふふざけんなぁぁああああぁぁああ!!!!」

人生を右に左に縦に横に斜めに、とスライダーの如く大きく揺さぶる事件。




why took a sword





「ふざけるな、だと?参宮、お前は何に対して言っているんだ?」
「何って、決まってンだろ!!なんで俺が"退学"なんだよ!!」


朝、担任に呼ばれ、少量の嫌な予感を胸の奥にしまい、校長室へ向かった。
そして、放たれた教育者の最たる者からの言葉は、

「君ね、もう来なくていいよ」

辛辣、なんてものじゃない。



「なんでって、ほら、えーと…アレだよ、アレ。…なんだっけ教頭?」

指を一つだけ立て、ブンブン振るが、答えが見つからないらしく、隣の教頭に助けを求める。クイッと上げるメガネは、まるで漫画のそれだ(笑い話に花を咲かせている場合ではないのだが)。


「参宮、お前は停学期間中にも関わらず、ビルに溢れるほどの不良を相手に喧嘩をしたらしいな。ハッキリ言って、お前は学校の秩序を乱す存在でしかない。金髪は直さない、喧嘩は止めない…」


腐ったミカンを見る目、というのは、こんなものなんだろう。

「ちょ、待てよ!!金髪なんざ、腐るほどいんだろ!?ケンカだって、一帆も一緒に─」
「山本…?…ハッ。言い訳もここまで来ると滑稽だな。山本が喧嘩などする訳ないだろう?」
「マジだって!!テメェら騙されてンだよ!!」

その後、何を言っても受け入れてはもらえず、体育教師三人係りで外に出される始末。



世間の風って、こんなにも冷たいものだっけ?


あれれ、目から鼻水が─



「わっ、ふっるい表現!!」
「だから心読む─…な、って」
「やあ、親友」
うなだれた頭を上げれば、早起きでもしてスッキリしたような、ムカつくほど爽やかな顔。

「一帆!!なんで俺だけ退学なんだよ!!テメェもケンカし─」
「あー、それ?ってゆーかさ、僕にまず言うこと、あるんじゃないんだ?」
う、と後退りを試みるが、掴まれた学ランの襟は、微動だに、せず。



「テメェなんで俺のこともチクろうとしてんだよ」
(で、出たぁああああぁぁああ裏一帆!!)


説明を、しよう(一応な)。
普段の一帆は、自分のことを"僕"と言う。しかし、それは仮の姿。本物の一帆は、腹黒の鬼畜の毒舌。しかも始末の悪いことに、この姿を知っているのは、俺と数人。
大抵はこの甘いマスク(俺からしたらそうは見えないが)にさっきの教頭のように騙されるのだ。


「や、一帆!!アレだ。な?…まあ落ち着けよ!なんつーの?言葉の綾っつうの?」
飛ぶ鳥、いや、お天道様までも落としそうな目つきを数秒保ち、いつものマスクに。

「ま、いいや!!結局、僕は無事だし、ねー♪」

(こ、このッッッ……)



「あ゛?」
「なんでもアリマセン」
よろしい、と満足げに反り返る。

そして、背後にあったらしい、小さなダンボールをドシッと俺に押し付ける。
何だこれは、と問えば、お前の私物だ、と。

「えっちな本とかは、僕がこっそり始末しといて─」
「ンなもんロッカーに入れてねぇ!!!!つーか受け入れるの早すぎだろ!!もう少し悲しむとかねぇのかよ!!」
「悲しいよ……でもそれ以上に、空月の行く末を案じてるんだよ、僕は」
「行く末…?」
にっこり、と返された笑顔は、悪質極まりない。

「二葉さんの、こ・とっ♪」
血が、引くとはこのことか。白目をむいて、そのまま気絶できたなら、どんなに楽、か。

(わ、忘れてた……)

呆然とした俺に、一帆が何やら言葉をかけているが、そんなことは、意識の外。



気づけば、ダンボールを抱えて帰路に立ちすくむ自分。
情けないとか、もうホント、どうでもいい。

なんて、報告すべきか。


まず嵐に…っていやいや、ダメだ!!なんでまず自分に言わないのか、と鉄拳が飛ぶ。

それならいっそのこと、開き直るか?……いやいやいやいや!!なに開き直っている、と投げ飛ばされるのがオチ。


(……あれ?もうこれって─)

「どう言っても、結果は同じだな」
「おい!!人の心読む、な…って、」
「久方振り…と言っても、昨夜だが、な」
「せ、聖夜!?」

凛と立ちすくむ姿は、しょぼくれた自分とは、真逆。

「おまッ…なにして─って、そうじゃなくて、なんでココに─」
聞きたいことは、山ほど。それを読み取ったのか、まあ待て、と手で制する。

「実はな、お前を迎えに来たのだ」
「…………迎え?」
「空月、お前には、我が聖ドルイド学園に入学してもらう」
「は、はぁああああぁぁああ!?!?」









同じ時刻、缶を蹴り飛ばす音が一つ、響いていた。


「痛た……ちっくしょー!!参宮のヤツ…」
「なぁーやっちん…もうアイツ相手にすんの止めね?勝てる気がしな─」
「あー!?そんなことだから勝てねぇンだよ!!」
「だって、よ…実際何敗よ?俺ら…」
「大学生でも勝てねぇのに、俺らが勝てるワケねぇって」
「勝ちゃいいんだよ!!次からはなんか…ひ、人質みたい、な!!」
「人質ったって…アイツ女いねぇし」
「あーでも噂で、妹いるって聞いたぜ?しかも超かわいいとか……」
「それだ!!その超かわいい妹を人質に─」
「出たよ、やっちんホント、ロリコ─」
「誰がロリコンだコラァア!!だいたいお前ら─」
「なぁー」
「ンだよ!!うるせぇな!!誰、だ─」


突如、乱入した声は幼く、振り返れば、その人物はもっと幼い。

しかも、出で立ちはかなり妙だった。ローラースケートを器用に乗りこなし、衣服は、ゆるゆるのタンクトップ。年齢対象は、正しいようだが、全く似合ってはいない、サングラス。そして、何より妙なのが、その長すぎる髪だった。左上に束ねてはいるが、それでも腰よりも、下。降ろせば相当、長いことが一目瞭然。

それに、最も視覚的におかしいのが、その色。背丈や声質からして、小学高学年くらいだろうが、さすがに、こんな"金髪"をした小学生は、いる筈もなく。
しかしその少女は、呆気にとられる数人の男に、臆する様子もなく、話しかける。


「なぁーなぁー。これ、お前が捨てた缶だろ?」
「…へ?…あ、ああ…」
思わず返事をしてしまう。

「だったらさ、ちゃんとゴミ箱に捨てろよ。それにさ、子供がタバコなんて吸っちゃダメだろ?」
「……」
「………」
「……………ぷ、ぎゃはははははははは!!!!」
「なッ、なんだよぅ!?!?」
「ガキにガキって言われちゃおしまいだぜ!!なぁ?」
「ホーントだぜ!!ガキゃ、さっさとおうちに帰んなー!ぎゃはははは………は、は‥…ハ!!?」








「迎えってッ……や、それより…入学ってッ!?!?」



驚きに、その大きな身体をオロオロとする空月だが、顔は嬉しそうに微笑んでいる。

「貴様…喜ぶのか、驚くのかどちらかにしろ。それに、正確にはまだ─…む?」
聖夜が、自ら話の腰を折った訳は、前方での光景にあった。

異様な少女が佇み、両の手を眉間に押し上げるように、すすり泣きをしている。何事か、と更に歩を進めると、妙な光景が三割り増しに。図体の大きな男児が、五人ほど、うんうん唸りながら、寝そべっているのだ。
聖夜は理性的に物事を処理する癖があったが、流石にこの光景は、処理し切れずにいた。
とりあえず、泣いている子供に話を聞く他ない、と歩み寄り、

「どうかしたのか」
と問うた。

少女はこちらに気づくと、その大きな瞳を一層潤ませ、駆け出し、飛びついたのだ。









空月に。



断っておくが、自己愛にそれほど満ちている訳でも、空月を馬鹿にしている訳でもない。
しかし、泣くような事態に陥り、声をかけられた二人が、自分と空月であるなら、間違いなくガラの悪い空月には、飛びつかないだろう。それとも、自分が思っている以上に、私とは飛びつきにくい存在なのだろうか。

そんな不安も、ある一声(というか一泣き)によって一掃される。


「らぁああづぅうぅうう!!!!」

名前を呼んだ(というか叫んだ)のであれば、合点がいく。なるほど、彼女は空月の知り合いなのだ。しかし、次には疑問が湧く。接点がなさそうに見える二人の関係だ。

「……空月、その娘は─」
誰だ、と問うつもりが、


「てめぇぇえぇええ!!!!」
ビクリ、と跳ねた肩は、二つ。少女と私だった。

疑問よりも、徐々に憤怒が支配をする。いくら既知な仲と言えど、泣いている、しかも子供相手に怒鳴るなど、あんまりではないか。


「ち、違ぇンだ空月!!あ、あのな、アイツらがな、…お、俺のこと"ガキ"って─」
そら見たことか。
怯えて縋るような顔になってしまったではないか(それにしても女なのに、"俺"とは…奇妙さが尚加わる)。


「あ"あ"!?!?テメェあれだけ俺にケンカはすんなとか言っておいて─」
言っておいて…?
つまりはなんだ?少女が空月に言い聞かせた、とそんなニュアンスに聞こえるのは、私だけだろうか。互いにの喧嘩の発端や、大差のない言い訳の口喧嘩になりつつあったので、痺れを切らした。

「…空月、そやつは─?」
夢中になっていたのか、今気づいたような顔で、こちら側にため息を一つ。




「……あー、コイツは、二葉。俺の"お袋"だ」









そうか空月。分かったぞ。昨晩の事件で、貴様は頭がおかしくなったのだな。そうか、仕方がない。早速ガヴンの医療班に申請をせねばなるまい。ショックか何かが原因で妄想癖が─

「誰が妄想癖だコラァア!!」
「む、人の心を読むでない」
「不憫そうな顔見てりゃ分かるっつの!!…おら、お袋からも言ってくれよ。アイツ全く信じちゃいね─」
「あの子だれだ?」
きょと、とした顔で指を差す。


(しぃいまったぁああああぁぁああ!!)

何がって、タイミングやらなんやらモロモロだよ。いいか?流れ的にヤツは絶対、



『申し遅れました。私は、聖ドルイド学園の者です。参宮君を迎えに来ました』
『…なんで?』
『何故って、入学してもらうためです』
『入学?だって空月は、もうガッコ行ってるぜ?』
『何をおっしゃいます。今し方退学させられたではありませんか』


ってことになる!
ヤバい!それはヤバい!非常に!



「ぉ、おぅ、っお袋ぉ!!!!喉乾かねぇ!?乾いたよな!!立ち話もなんだし、とりあえず、家帰ろうぜ?あ、ほら、アレだ!!冷蔵庫にブラウニー入れといたンだった!アレ食おうぜ!!な!?」
「空月……お前、」

バ、バレた!?
そ、そうだよな、こんな時間に家帰ろうなんて、怪しまれるか……


終わった─

鉄拳を覚悟した、その時だった。



「お前、さては彼女できたンだなぁ!!!」

神様仏様ぁああああぁぁああ!!
我が親ながら馬鹿に作ってくれてありがとうございますぅうぅうう!!!!


「いやさ、高校に入っても喧嘩ばっかの馬鹿野郎で、こりゃあモテないって思ってたけどさ、やっぱ俺の息子だな!よりによってあんなカワイイ子が彼女だなんて、やるじゃん空月!早速帰ってパーティーしようぜ!!えー、と…何ちゃんだっけ?」
「………天万聖夜と申します。ところで、"彼女"とは、何─」
「あー!と、とにかく座ろう!!家に帰ろう!!そうしよう!な!?」
状況を理解させぬまま、三人で我が家へ向かうことに。








「たっだいま!父ちゃん!!聞いて聞いて!」
嬉しそうに報告をする先に、人はおらず、あるのは、一人の男の写真のみだった。
ちら、と空月を見ると、たるそうに説明をする。

「あー、親父だよ。けっこう昔に死んだんだ」
瞬間、昨夜自らが発した言葉が蘇り、済まないと言いかけた。

『いい名だ。きっと御両親はお前のことを愛しているのだな』

「別に、気にしちゃいねぇよ。」
乱暴に、ぼふ、と大きな手を頭に置かれる。


「悲しむほど、記憶ねぇし」
自嘲気味に笑った。


「これって、もしかして最高の親不幸なのかもな」
意外だ、と心底思った。




「いよっし!父ちゃんに報告終了!!空月!ケーキ食おうぜ!ケーキ!!」
「だから、ケーキじゃなくてブラウニーだっ─…あー!ヤベェ洗濯物干すの忘れてた!!今日、嵐早番だからできねぇンだった!!」
「えー…そんなん後でいいじゃん」
「ダメだって!先に紅茶でも淹れといてくれよ」
言うが早いか、フットワーク軽く、ドタバタと奥へ失せてしまった。


「んじゃ、聖夜ちゃん…だっけ?紅茶でも飲もうぜ!!」
「はい。…あの、一つお聞きしたいのですが、」
「んー?」
ティーセットを探す傍ら、こちらを見ずに返事をする。

「空月の…、父親─」
は、何故亡くなってしまったのか、と聞きたかった。が、単語のみにすかさず反応されてしまう。


「父ちゃん!?父ちゃんはな、超超超超いい男でさぁ!もうマジかっこいいのなんのって!!会ったのは、中学ン時でさぁ!!俺がレディースの頭だった時に、アイツまだ鳶の平社員だったンだけど、もうマジその頃からかっこよくてさぁ!!『ガキみてぇなことしてンじゃねぇよ』って叱ってくれて、俺もう一目惚れしちまってさぁ!!」
「は、はぁ…」

危うい手つきで、棚上のティーセットを探っているので、(しかも椅子の上に乗って)代わりにカップを受け取る。

話が一段落ついた頃には、ティーセットの大半は出し終えていた(私が)。



「……では、もう一つ…お聞きしたいのですが…」
「なになに?」
年なら教えないよ、とはにかむ顔に応えず、瞳を見据えた。



「貴女は何者ですか?」
きょと、とした後、ニッコリ、と笑ってみせた。急に、おちゃらけていた顔から、大人の女のような風格が滲み出る。


よっ、というかけ声で、椅子から勢いよく飛び降りる。

話を続けた。



「部屋の至る所に、"陣痕"が残っていました。しかも、どれも高度な魔法陣の、」
もう一度、問う。




「貴女は何者ですか?」
「あーあ、陣痕は消せたと思ったンだけどなぁー。やっぱ聖夜ちゃんの目は、ごまかせない、っかー」

くるり、振り向いた顔は、含み笑い。


「噂通り、優秀だね、聖夜ちゃん。さすが、天万家の"ラストチャイルド"♪」
身構える。身体の危機感知能力が、悲鳴をあげているみたいだった。"危険だ"、と。


「まあまあ。そんな怖い顔しなさんな!」
お茶でも飲もう、と言って立てた人差し指の先に、ティーセットが宙を浮いていた。






「つまり、とある理由により下界に身を潜め、とある理由により、人間として暮らしている、と?」
「そういうことになる、ね♪」
つまり、と要約はしてみたものの、ほぼ教える気はないようで。


「ごめんね?こっちとしても、まだ教えらんなくってさー」
ミルクが戸棚からテーブルにリズムミカルに向かって来る。


「ま、別に悪巧みしよぉって腹じゃねぇから、そこんとこよろしく♪」
「はぁ…」
胡散臭い。胡散臭すぎる。しかし、言っていることは、何か真実味があるように思える。


「ただ、俺らは、平和ぁーに暮らしたかった、ってだけの話、」
ズキン、痛んだ胸は、罪悪感から。


「……ならば、貴女に謝らなくてはならないことがあります。…私は、─」
「あー、ストップストップ!!そんなつもりで言ったんじゃねぇよ!」
紅茶でも飲め、という意味か、カップが慌ててこちらに寄ってくる。


「でも…私は、貴女の息子を、巻き込んでしまったッ……だから─」
「アイツは、んなに器用じゃねぇよ」
「……器用、?」
そっ、と視線を上げると、ため息を一つ。確実に、そのため息は、母親のそれだった。


「アイツ、馬鹿で単純だから、目の前のこと一つひとつやりこなしていかないと、気が済まねぇの。だから、先のことなんざ、これっぽっちも考えちゃいねぇよ」

『はぁあ?怪我人ほっといて逃げるなんざ、俺の辞書にはねぇんだよ!!』

「それに、"巻き込まれた"なんて、思ってねぇと思うけど?」
少なくとも、俺はそう育てたつもりだ、と静かに紅茶を啜った。


本当に、そうだろうか。魔界では、許可が降りない限り、下界での生活は禁じられている。それを冒してまでも、そうしているならば、それなりの理由があるのだろう。それを、私が、壊してしまったのだ。自分の命と引き換えに。他人の平和を壊してまで、生き長らえようなどとは、毛頭思っていない。だが、現実に、こうして命は健在。

しかも、逃れた筈が、今度は、自らの息子が巻き込まれる。
それを快く思う母親は、いないだろう。そして、その息子自身も。


その後、紅茶の味も、出された菓子が何だったのかも、覚えていないくらい呆然としていた。





「ふー。とりあえず、転校ってことで、納得してくれて良かったぜ。サンキューな、聖夜。……おい、聖夜?」


帰路、歩を先に止めたのは、自分だった。具合でも悪いのか、と駆け寄る空月の、顔を見た。きっと、みっともないくらい、情けない顔だっただろう。まるで、許しを乞うような。


「空月。…自由になりたい、か?」
「……………え?」
「お前は、本来、"こちら側"にいるべきではない」
優しい母親と、静かに、ひっそりと暮らしていた。それが、本来の姿。


「一つだけ、あるのだ…」
血に塗れるのは、自分だけで、いい。



「ナイト契約を、破棄する方法が、」



夏の到来を、遠ざけるような、冷たい風が、二人の間を、通った。



「ナイト契約を…破棄する方法…?」


瞳を、閉じた。


「ナイトの主である私を、殺せ」


お前の幸せと、引き換えるなら、この命、惜しくはない。


「そうすれば、貴様は自由になれる…」
「…本当、か?」
「………ああ」

そうすれば、全て、終わるのだ。











「だアホぉおぉぉおおおお!!!!」
「っっっっ!?!?」


死には、近くて遠い、痛み。それが頭蓋骨に反響した。
どうやら、空月の拳骨が振り下ろされたようで。手加減は一切感じられなかった。


「っ何を─」
「バッカじゃねぇの?俺がお前殺して自由になって、ヘラヘラ笑えるとでも思ってんのか?」
「それはッ…そうではなくて、私は─」
「意味、ねぇんだよ」
「……意味?」
ふん、と少し怒ったように先を歩いていってしまう。




「ッ…空月!!私は、…私は貴様を戦いに巻き込みたくはないのだ!元の生活に、戻ってほしいのだ!」
「そういうのが迷惑なんだよ!"お前のため"とか、勝手に言ってんな!!」


離れた距離で、大声を張って。互いの主張が、こうも合わないのか、と徐々に怒りに変わる。



「迷惑でもなんでもいい!私が、…私が巻き込んだんだ!!…空月をッ……元々死んでいた命だ!だから、貴様に─」
「死なせたくねぇからナイトになったんだ!!!!」


その声は、最早、怒鳴り声に近く、怒りがひしひしと伝わる。



「誰も守れねぇくらいなら、それこそ死んだ方がマシだ。…俺は、俺の意志で、アンタを守りたいと思った。だからナイトになった。それだけの話だ」

『それに、"巻き込まれた"なんて、思ってねぇと思うけど?』

「……それくらい、分かれよな。俺の主だろ」
「………ら─」
「あー!止め止め!!こんな話止めようぜ!!ったく、道端で何言わせてンだよッ…」




人の運命を、人生を、決めるなど、烏滸がましい、と常々思っていた。
運命とは、人生とは、他人に課せられるものではない。誰かを己の為だけに縛り付けるなど、なんて自分勝手な。

同じ魔族として、ナイト契約を作った先祖に、嫌悪さえ抱いた。


でも、


「なんか知らねぇけど、魔界とかいうとこ、行くんだろ?」

違った。


ナイト契約には、言霊と契りが必要。
あと一つ、ナイト自身の意志も、必要なのだ。

運命は、人生は、俺が決める。なんて、台詞さえ、言いそうな、この男が


「ああ…そうだな」


教えてくれた。



why took a sword


それは、貴女を守るため


お母さん登場。れっきとした母親です。
それにしても青春というか今時小っ恥ずかしいな。

いよいよ次は魔界に行きます

相関図